セックスレスの始まり

一穴主義外伝【セックスレスの始まり】

セックスレスの始まりは妻の妊娠だった。

結婚して暫くすると妻の妊娠がわかった。

そのときは二人で喜んだ。
上の子供たちも妹か弟かができることを喜んでくれた。

だけど、お腹の赤ちゃんは順調とは言えなかった。
妊娠3か月に入っても、いつ流れてしまうかわからないという理由で、出産予定日が確定できない状態だった。

「残念だけどお腹の赤ちゃんは育っていないから」
「このままだといつ流れてしまってもおかしくないですよ」

妻と一緒に病院でそのことを医師に告げられたときは、
言葉が出なかった。

医師は、お腹の赤ちゃんが育たない原因は、たぶんストレスだろうと言った。

ストレスか。
その通りなのかも知れない。

というのは、俺と妻は互いに子供を連れての再婚同士だった。
妻は一人娘を連れて俺のところに嫁いできた。

慣れない生活。友人も知り合いもいない環境。生まれ育った妻の地域とは全く違った風習や習慣。俺の連れ子たちとの関係づくり。
顔には出さなかったけれど、妻の抱えていたストレスは生半可じゃなかったのかも。

「どうしたらいい」

気丈な妻が涙目で尋ねてきた。

俺は嫁いできた妻をほったらかしにしていた訳じゃなかった。
妻の連れ子にも自分の子供と変わらないくらいの気持ちを持って接していたし、もちろん妻に対しても気遣いを忘れたことはなかったと思っている。

「今の生活で何も嫌なことはないよ」
「あなたもちゃんと、わたしと娘のことを思ってくれているし」

妻はそう話した。
みんなで生活する中で何の不満は浮かばないし、家族で一緒に楽しい時間を過ごしている。
お腹の赤ちゃんが育たない原因がストレスだとしても、そのストレスの原因が何なのか、妻にもわからないと涙を浮かべた。

「あなたの子供たちとも仲良くやれてるし」

そう言いながらも、妻自身も気づかなかったストレスの重みが、
お腹の子の成長を妨げていることは間違いなかった。

たとえ楽しく過ごせていたとしても、妻の心の何処かには何某かのストレスの要因が間違いなく存在していた。
俺はそれに気付いてやれていなかったし、妻が心から安心できる居場所を作ってあげられてなかったのだと自分を責めた。

俺は、妻のまだ目立たないお腹に手をあて、

「お前も逢いたいだろ」
「俺たちに」

そうお腹の赤ちゃんに話しかけていた。

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